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錆色の汗

目覚め

工業地帯の小さな町では、進学せずに働く少年達は数多い。

いくら照明を増やしても薄暗いままの町工場で、生まれたときから、油塗れになって働く父親の汗を見て育つのだ。
物心ついた頃には何かと仕事さえ与えられ、職人達と一緒に飯を食い、毛穴まで染み込んだ鉄の粉を洗い流すために風呂屋へと向かう毎日だ。


清志は、そうして育ち、来春には高校生になろうとしていた。


同級生の中には進学しない仲間も少なくはなく、親の後継に弟子入りしたり、振るわない家業を援けるために働きに出たり。
この町では、子供でいられる時間は短い。


ある日のホームルームは、卒業後の社会活動教育だった。
生徒たちは区役所に赴き、自らの戸籍謄本や住民票を取り寄せて、見方や扱いを学ぶのだ。

進学を決めている清志には無関係にも感じられたが、大人の世界との接点は魅力でもあった。


初めて手にした戸籍謄本。


自らの名前の上に見つけたのは、

「養子」

その二文字であった。

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