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Birth

1 北山光成

 




カツカツと靴を鳴らしながら北山光成(きたやまみつなり)は屋上へと続く階段を上がった。
途中もどかしくなり1段づつ抜かしながら上がっていく。
なん…っで、俺が、…こんなことを!!!
何度も舌打ちしながら、北山は怒りに任せて足早に屋上へと向かう。

「クソガキが…!!」

ばん、
と勢いよく開いた先、飛び込んできたのは一面真っ青な視界。
ザアッと音がして冷たい北風が頬を刺す。
北山は目をこらし、真っ青な空の中にいるはずの、都筑彪流(ツヅキタケル)を探した。
サクにもたれ掛かり、右足を軽くかけ、空に向かって煙草の煙りを悠長に吐いている。

「都筑!都筑彪流っっ!!!」

息も荒く北山が呼ぶと、彪流はこちらも見ずに言った。
「…なに。センセ。あ、ほらほら見て。どーなつ。」

彪流が吐いた煙りは、なんとか輪っかの形のままふやふやと漂う。
「なに、じゃねー!!まず煙草を消せ!!そしてこっちを向きやがれ!!」
北山の怒りは頂点に達していた。
彪流は嫌そうに眉をしかめる。
「なんだよ、俺なんかした?」
「がっ学年主任に呼びだされてるんだろう!なにやったんだ!」
「ああ別に。トイレで煙草見つかった」
「『別に』じゃねーよ早く行け!」
「やだよあいつしつこいもん」
「お前が行かないと担任の俺がネチネチ言われんだよ!!」

北山がまくしたてると彪流はぶはっと噴き出し笑い出した。
「な…なんだよ」

細身で長身の身体を折り曲げ、爆笑している。
北山は彪流が笑っている場面を初めて見た気がした。
必要以上に整った目鼻立ちが崩れ、どこにでもいるような男子高校生のようになっている。
……なんだ。
こんな顔も出来るんじゃないか…
まだ肩を揺らしクックッと笑う彪流をほっとしたように見た。

「あー笑った。センセらしい」
「なにがだよ」
「生徒より自分が大事なんだもんね」

思わず北山は喉が詰まった。取り繕うと口が開くが、諦めたようにまた閉じる。


「……いいけど。俺はセンセみたいな奴のほうが信用出来る。口先だけの、正論ばっかり言う奴よりよっぽどね」

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