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だからぼくは旅に出るのさ。

あるところに、
さみしさを知らない男の子がいました。

男の子は、
「自分はさみしさなんて感じたことがないから、とても幸せだ」
と思っていました。


あるところのとなりのまちに、
いつもさみしさを感じている女の子がいました。

女の子は、
「自分はいつもさみしい思いをしているから、とても不幸だ」
と思っていました。




ある日、男の子は旅の人に出会いました。


男の子は旅の人に尋ねました。

「ひとりでずっと旅をしていて、さみしくはないの?」


旅の人は答えました。

「ぼくはさみしくなんかないよ。
 だってほら、今もこうして君と出会って話をしている。
 旅に出る人はね、旅に出ない人よりも、
 もっとたくさんの人に出会えるんだよ。」


すると男の子は、
「そうか!ぼくもいつか旅に出たいな。」
と言いました。

旅の人が
「じゃあ、ぼくと一緒に行くかい?」
と聞くと、

男の子は
「うーん、やめておくよ。
 お母さんが心配するだろうからね。
 それに父さんはかんかんに怒りそう!」
と言って、
家に向かって走り出しました。


旅の人はそれを微笑みながら見送りました。





その次の日、女の子は旅の人に出会いました。


女の子は旅の人に、男の子がしたのと同じ質問をしました。

「ひとりでずっと旅をしていて、さみしくはないの?」


旅の人は、同じように答えました。

「ぼくはさみしくなんかないよ。
 だってほら、今もこうして君と出会って話をしている。
 旅に出る人はね、旅に出ない人よりも、
 もっとたくさんの人に出会えるんだよ。」


女の子は、
「それは、
 旅に出る人は、旅に出ない人よりも
 もっとたくさんの人とお別れをする、ってことね。」
と言いました。


すると旅の人は
「お別れなんてないさ。いつだってまた会える。
 君とぼくだってそうだよ。いつだってまた会えるんだ。」



それを聞いた女の子は、
「お別れはあるわ。
 だって・・・だってわたしは、
 お母さんにもお父さんにももう会えないんだもの!」
そう言って、わんわん泣きました。





でも旅の人は知っています。

もう会えないなんてことはないんだ。





旅の人は、泣き止まない女の子にこう言いました。


「ぼくと一緒に旅をしないかい?」




女の子は驚いて、いそいで家に駆け帰りました。


そして、旅には何が必要なのか、一生懸命考えました。

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