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Faux amour

1

「姉さんが、いないの」
そう言って、目の前の彼女は泣き出した。
膝の上には、猫のルシーを抱いて。
「突然の連絡でごめんなさい、式の直前だったのに」
姉の婚約者の僕に、彼女は姉が居なくなった悲しみを切々と訴える。
ルシーは彼女をじっと見つめていた。
「それで、何か手がかりとかは無いの?」
「何も・・・残ってなかったわ。ちょっと行ってくる、ってあんなに笑っていたのに!」
ルシーを強く抱きしめて、彼女は叫ぶ。
強く抱かれて、ルシーはギャっと鳴いた。
「とりあえず、警察に行こう。ここで何か言ってても仕方の無いことだよ」
「いいえ!警察はきっと何もしてくれないわ、私のストーカの時も何もしてくれなかったじゃない!」
ガタガタと震え、彼女は強く首を横に振る。
僕はため息をついて、彼女からルシーを取り上げた。
ルシーは彼女の腕から離れ、僕を一瞥してから、地下へ続く階段を降りて行った。
彼女は脅えた、いや、情愛を込めた目で僕をじっと見つめた。
「ずっと私の傍にいて、お願い。私はこれで貴方とルシーだけになっちゃった」

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