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男と女の物語

第一話

最近、ウイスキーのロックが体に堪えるようになってきた。

『ラフロイグをハーフロックで』…そうマスターに頼んで、先ほどから気になっている女性に視線を向ける。

『俺のタイプ…』

女性がこの店に来るのはマスターの接し方から見て初めてらしい。

カウンターだけの、このバーで真ん中を陣取って飲んでいた俺から2つ席を空けたところに女性は20分ほど前に座った。『赤ワインを…』と頼んだ以外は言葉を発することなく、バックバーの一点を見つめて、ゆっくりと飲んでいる。

スーツ姿にスラリと伸びた長い脚が俺の心をかき乱した。

ウイスキーを優雅に飲んでいる風を装ってはいるものの、心中は穏やかではない。

『良かったら一緒に飲みませんか?』…喉元まで声が出掛かっているのだが、ダメだ。

チラッと女性を盗み見る。髪の毛はふんわりとカールされ、肩まで。瞳が綺麗なことは横から見ただけでもわかる。何から何まで俺のタイプの女性だ。

これを逃したら、二度と会わないかもしれない。

マスターにも、女性にも悟られないよう大きく深呼吸して…さぁ思い切って声をかけよう…

その瞬間

『いらっしゃいませ』

一人の男性が女性の横に座った。
彼女は飛びっきりの笑顔で男性にこう言った。
『遅くまで、お仕事お疲れさま』

対するオレは…
『マスター、チェック』

こうして俺の1日は今日も幕を閉じた。

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