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そして花となれ。

運命

町外れにある寂れた中古ゲームショップ、STARS(スターズ)。
元々コンビニだった店内を改装し、中古で買い取ったゲームソフトやCD、PCソフト類を販売するこの店は一時期は常に人が出入りする忙しい店だった。
しかし郊外に出来た大型チェーン店に客足は取られ、気付けば一番の売れ筋はアダルトなPCソフトという有り様。
それでも一向にめげる様子のない店長、高橋は、せっせと仕事に励むバイトの比呂を眺めながらふと呟いた。




「運命」







「……って、信じる?比呂。」



間近に寄せられた顔に、目に吸い寄せられそうになって、比呂は慌てて顔を横に振った。同時に手にしていたCDがバラバラと音を立てて落下する。
「あっっおいちょ、なーにやってんだよっ」
高橋が慌ててしゃがみこむ。比呂が落としたCDを拾い集めた。
「ケース割れたじゃんこれぇ。比呂、買えよ。この『まじかる☆ういっちぃず~ウキウキのエロぼいすをあなたに☆』」
「あ、はい、買います」
「……ジョーダンだよ。どうせ中古なんだからケース変えればそれで……、ってなんかいつもに増してボーーーッとしてるけどどしたの」
「えっ…いえ、べつに……」

比呂は顔を赤くしながら、俯いた。
高橋はふーん?と首を傾げながら比呂を見つめる。
……ちょっと、あんま見ないで欲しい………

店も狭いならレジのカウンターはもっと狭い。男2人が並んで立てば、少し動いただけで肘や腕はすぐにぶつかる。なのにこの高橋という男はいつも比呂の隣に立ちたがった。

「……あの、店長。俺、もうすぐあがりなんですけど……」
「え、あ、そうだね。でもその大量に買い取ったCD、処理してってね~」
「わかってます。だからあんまり話し掛けないでもらえますか。(あとあんまり近寄らないでください)」
「ん?あとのほうなんて言ったの」
「いえ別に。……ええと、運命?がどうかしたんですか」
「ああそう運命。比呂は信じる?」
「え……っ……」


あまりにも見詰めてくる高橋に、そんなことあるはずがないと思いながらも少しだけ期待してしまう。

比呂は今にも飛び出しそうな心臓を覆う胸を掴んだ。
「俺は……、あると思いますよ。運命」
そう言うと高橋は嬉しそうに笑った。

「運命の相手とか。出会い、とか……。俺はあると思います」


高橋の目を真っ正面から見られない比呂は、喉仏や薄い唇を見ながら言った。
「だよね。比呂ならそう言うと思ったよ」

よく笑う高橋の目尻には少しだけ皺が出来る。
その顔がたまらなく好きだと、

言えるはずのない思いを、比呂はそっと噛み締めた。

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