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吸血鬼の住む街

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 風を切る音とともに二つの影が路地を駆け抜ける。

 人の目に見えない影は路地から大通りへと続く数歩手前で影の一つが動きを止めた。

 道を塞ぐように立つのは2メートルはあろうかという銀狼。

 ただの狼ではないと分かるのは存在感や敵意剥き出しの眼光からだった。

『まさか吸血鬼だったとは……』

 もう一つの影が追い付き、声を発した。

 雲に隠されていた月が辺りを照らし出す。

 後ろにいた影は道を塞ぐ狼よりも一回り大きい白狼だった。

『その姿を見たのは何十年ぶりかな』

 月明かりに照らされた影の正体、蝙蝠に似た羽、手には鋭い爪を持つ青年の姿をしていた。

 この街に辿り着いたばかりの青年は運悪く狼達と遭遇してしまったのだ。

『やる気はあるようだ』

 覚悟を決めた青年が戦う構えを取ると、前にいた銀狼が笑う。

 どちらが先に攻撃を仕掛けてくるのかと身構えていると、前にいた銀狼が高く飛び上がっていた。

「くそっ!」

 一直線に向かってくる銀狼の爪をギリギリで避けると、コンクリートを削る嫌な音が響く。

 間をおかずワンステップで突進してくる銀狼に身をかわすのが精一杯だ。

 避ける度に薄く服が裂け、血が滲み出る。

 そのどれも致命傷ではないがだんだん息が上がっていく。

 反撃のチャンスを狙っていると銀狼も気が短いのか振りが大きくなっていった。

 狼の爪が右足を掠めた瞬間の隙をついて体当たりすると、脳震盪を起こしたのか起き上がれない。

 機会を逃さず爪を伸ばし攻撃を加えようとした時、左肩に走った激痛に手は空を切りその場にくずおれた。

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