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恋夜

16時まであと10分。
電話をかけてから、約5分。

そろそろかな。

周りに気付かれない程度の笑みを浮かべて、藤岡 蒼汰はカルテを手に取った。
黄色と青、つまり至急、看護師から医者への連絡がある、という目印の立てられたカルテを、次々とセンターテーブルの上に置いていく。
10冊近くあるカルテを見て、軽いため息を洩らした。

新人だから仕方ないけど、受け持ち多過ぎだろ。

午前中は外来、午後は助手とは言えオペ2件。
そのため、今日は一度も病棟に姿を見せていない恋人の姿を想い、藤岡は微かに眉を寄せる。

新人外科医と、看護師。

忙しいのは、お互い様で。それを咎めるつもりもないけれど、寂しくない訳じゃない。

だから。仕事中とは言え恋人の顔を見られると、少し心が浮つくのは責められないだろう。

バタバタと足音が聞こえてきて、藤岡は身体の向きを変えた。


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