カミツギ-神継-
大地の章・第2部
わずかに緑が芽吹くだけの荒野は、時々強い風が吹いて砂塵を巻き起こす程度で、平和な日々が続いていた。
その日も、少しだけ風が強くて、砂が目に入るのが痛いな、くらいの割りと心地いい天気で、
シンラは風に黒髪をなびかせながら、荒野に大きく構える遺跡へと走っていた。
遺跡の出入口付近に、探していた人物の背中を見つけ、駆け寄るスピードが増す。
「父さんっ!」
そう呼ばれ、後ろを振り向いた灰色の作業服に白衣を着た青年は、父親とは思えぬ若い顔立ちに、左耳に赤いピアスをしていた。
だが、自分の元に駆け寄り、息を切らして膝に手をついて屈む少年に向ける眼差しは、父親の優しさに溢れている。