会員登録/ログイン

ぶきっちょ王子と籠のなかの姫君9 -sera-

Ф1Ф

 ж ∴ sera ∴ ж


 コナン先輩が秀さんに刺された。

 その恐ろしいニュースは、お見舞いに来ていた優ちゃんから知らされた。


午後8時。

 それは面会時間終了の時刻だった。

 学校から帰ってからずっと側にいてくれた優ちゃんに、

「もう帰らないと、また看護婦さんに叱られるよ」

 って僕が注意したときだった。

 救急車のサイレン音が近づいてきたんだ。

 そして、廊下がバタバタと騒がしくなってきた。

 ここはとても小さな病院なので、めったに急患は来ないと聞いていたから、僕と優ちゃんは顔を見合わせてしまった。

 重病人を受け入れられる体制、整っているのかな?と。

 けれど、それは僕たちが心配することじゃないし。

 とにかく優ちゃんは帰らなきゃ、と、なかなか椅子から立ちあがろうとしない彼を急かし、ようやくドアの外へ見送った。

 心配して来てくれるのは嬉しいけれど、
 りんごを剥こうとすれば指をざっくりと切るし、
 花を生けようとすれば花瓶を割ってしまう優ちゃん。

いつの間にか僕は彼に包帯を巻いていたり、
ガラスの欠片を片付けたりしていて(優ちゃんにやらせたら、また指を切っちゃう!)、
 どっちが心配される側なのかさっぱり分からなくなってしまうんだ。


 けれど、優ちゃんの世話を焼いていると、嫌なことや不安なことを考える暇がないから、助かる。

 一人でいると、閉じ込められていたときのことや、秀さんの家の養子になることなど、いろいろと考えてしまうんだ。

 とにかく今は身体を治すことだけ考えてね、とお医者さんに言われていた。


 昨日、僕は自分の身体を診察してもらった。

 その前に、とても長いことお医者さんと話をした。

あの部屋に監禁されている間に僕がされたこと、お医者さんはある程度知っていて、じっくり、ゆっくり、話して聞かせてくれた。

 それはとても酷い犯罪行為で、決して許されないんだ、ということ。

 けれど、毎日のように世界中で何件も起きている、不幸なことにすごくメジャーな犯罪なのだ、と。

 なかには本当に心が壊れて、生きていけないほどダメージを受けてしまう被害者もいるけれど、自分としては何とかして立ち直って欲しいと思っている、とお医者さんは言っていた。

 やられた側にはなんの罪もないのだから、堂々と生きてほしい、負けてほしくない、と。


 それから、暴行を受けた傷はしっかりと手当てすることを薦められた。

 僕を気遣いながら、でも、しっかりと必要性を説明してくれたので、
 抵抗はあったけれど、このお医者さんにならいいと思って、診察してもらうことを決めた。

/39ページ 

週間ランキング