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アレグロ×アレグロ(1) パーフェクト・コンダクター

アレグロ×アレグロ(1) パーフェクト・コンダクター



 雲が多い深夜。一部を除きほとんどのビルや家から明かりが消えた第10地区の寂れた路地を駆け抜ける1つの影。それを追う2つの影。
「ターゲット、ポイントCを通過しました」
『了解。そのまま追い込んで』
「了解」
 路地は入り組み、初めて足を踏み入れた者ならば間違いなく迷って警察のお世話になる。
 しかし、現在そこを駆けずり回っている3人はどんなに細い道をも熟知していた。いや、どちらかと言えばバックアップがある追う側の2人の方が地理的には有利。追われている人影はなかなか突き放せない追尾者に焦り、どんどん自分の現在の居場所がわからなくなってきている。
 そして、やや開けた場所に出た。と、そう認識した瞬間目の前が真っ白になった。
「なっ」
『そこまでだ』
 拡声器を使った声でそう言うのはこの10地区を統治する警備部隊長。だが、その声はまだやや高く、逆光から見える影は側にいる部隊員にくらべ小柄で細身だ。
『強盗、および魔法の違法仕様の罪で拘束する』
「っうるせー!てめー見たいなガキに捕まるか!!」
『どう思おうと勝手だが・・・・逃げ道は無いよ』
 その言葉通り、周囲は十数人に囲まれていた。
『はい。確保』
 あまりにも軽い言葉でそう言いのける。そして、あまりにもあっさりと片付いた。
「ちょっと人多すぎたかな」
 未だに抵抗している強盗犯をチラリと見ながら、隣に立つ補佐官へそう洩らす。
「いいんじゃないですか?ここ半年ほど大きな事件も起きず、みんな暇なんですから」
「とんだ給料ドロボウだな」
「平和な証拠です。いいじゃないですか。というか、隊長はもう少し休みを取るべきですね」
 と、頭半分ほど下にある上司を見る。
「家にいてもする事無くて暇なんだよ」
「まあ、俺もじっとしてるよりこうして動いている方が好きですがね」
「同感。・・・さて。報告は本部で待つとして・・・帰るか」
「はい」
 雲が流れ、顔を出した月を、ここ、エストワール王国第10地区警備部隊長、壱葉・グレンノースは見上げてから補佐官であるオズワルドを連れ、本部へ向け歩みを進めた。

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