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3週間のキセキ

宣告

空調が完璧に調えられた屋内から一歩出れば、けたたましい蝉の鳴き声が出迎えた。



真っ青な空に浮かぶ入道雲。
ぎらついた太陽。

季節はすっかり夏一色。


「梅雨はどこ行った・・・」

ここ数ヶ月忙殺されていたために、春からの記憶が曖昧だ。

桜は・・・、見た。
紫陽花は・・・、あぁ・・・見逃したな。
今なら、蓮が綺麗だろう。
明日あたり、学園の中庭の池に見に行こう。
あそこの花壇は素晴らしい。
金持ち学校だから、そんなところも手を抜かない。
見る奴なんて、そういないけど。

違う・・・。
そうじゃない。
こんな事を考えている場合じゃない・・・

胸ポケットの中で、携帯が振動した。
ディスプレイには着信の文字と相手の名前が表示されている。
それを確認して、電話をとった。


『ーー俺だ』

聞こえてきたのは、聞き慣れた声。
魅惑のボイスと騒がれている、他人はどうあれ、自分を落ち着かせるには十分だった。

「どうかしましたか、雄星」

『どうしたじゃねぇよ。三日も寮に帰らないで何やってるんだ?』


何をやってる・・・?

今でてきた建物を振り替える。
なんといえばいいのだろうか。



『・・・朱里?聞いてるのか?』

「あー・・、聞いてますよ。私にもいろいろあるんです。それより、机の上に置いといた書類、チェックしてくれました?」

『・・・・・・』

「してないんですね。夕方までには戻ります、それまでにーー」


『お~い雄星、遊びに来たぞ~』

不意に乱入してきた声に、言葉が途切れる。

『あ、奈津来たから切る』



ぷっつりと切られた。

繋がっていない電話を片手に、立ち尽くす。

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