恋すれど…
-01-
勝ち誇ったような様子の幹啓を見ていると、今まで知っていたつもりの幹啓は、一体誰だったのだろうと不思議な気持ちになった。
「ほら早くしろよ。」
ズボンの前を開き、自分の物を取り出し、これ見よがしに俺の顔の前で玩ぶ。
――コイツ、俺がしているところを見ていて興奮していたのか?
硬くなりかかっている。
下から思いきり睨み付けてやったが、その程度の事に動じるはずもない。
幹啓は、元々マイペースで意志が強い。
ここぞという時は本当に頼もしいのだが、まさかこんな事になるなんて。
――いくらなんでもできない。
躊躇している俺に苛立ったのか、顎を鷲掴みにし、口の中に無理矢理指を突っ込みこじ開けようとする。
「ぐぅ……や…だ」
幹啓の手首を掴み、首を振って逃げようとするのだが、背にしたロッカーに追い詰められてしまった。
「秘密をバラされて困るのは俺じゃあない。お前だろ。各務先輩、どう思うかなぁ。お前が、先輩のタオルに顔を埋めて、先輩の名前を呼びながら達っちゃったなんて聞いたらさぁ。」
――そうだ…誰に何と思われようと、言われようと構わない。
でも、先輩に嫌われるのだけは嫌だ。
先輩に迷惑だけはかけたく無い。
俺の気持ちが揺れたのが伝わってしまったのか、幹啓はにっこりと笑いながら耳元で囁いた。
「諦めろ、お前に選択権は無いんだ。」
身体中の力が抜けて行った。
どうしてこんなことになってしまったのか、俺は何かいけない事でもしたのだろうか。
今はっきりと分かっていることは、さっきまでの幸せな時間は二度と戻っては来ないということだけ。
幹啓は、力無く開けた俺の唇を指でなぞり、整った顔に暗い笑みを浮かべて何かを呟いた。
その言葉を聞き取ろうと目を上げた途端に、幹啓のものが口の中に押し込まれた。
「うう―ッ……ふ…んん…」
顔を背けようとしても、幹啓が前髪をガッチリと鷲掴みにしていて動くに動けない。
気持ち悪くて何度もエヅクけど許して貰えない。
次第に幹啓のものは大きさと硬さを増して俺の口の中一杯になっていた。
「ほら、舌を使えよ。くわえてるだけじゃ気持ち良くなんねえだろうが。」
惨めだった。
でも、俺は決めた。
幹啓に涙は見せない。
これ以上弱味を見せたくない。
だから絶対に泣かない。
何も考えない。
石になるんだ。
無になるんだ。
焦れた幹啓は俺の頭を掴んで荒っぽく前後に動かし始めた。