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G・ガール!

G・ガール! 1

一日目

 夏休みも半分を過ぎようとする頃。
 蝉の鳴き声と共に、太陽が地面を焦がす音が聞こえてきそうな暑い日だった。
「本当に来ないの? 後から父さんと来てもいいのよ?」
 母は玄関先で、靴を履きながら何度も繰り返した質問をもう一度だけ聞いた。
「きっと喜ぶと思うわよ、あなたの顔見たら」  
 これから実家へ向かう母を見送りに出て来た爽汰は、睨むようにして息子の返事を待つ目を見られずに答えた。
「……よろしく伝えて。また今度遊びに行くからって」
 母は、はあと大きくため息をついてから、諦めたように荷物を手に持って玄関のドアを開け出て行った。  
 お盆休みの時期に入ってすぐの帰省。朝、会社に向かった父も、仕事を片付けたらその足で母の後を追う事になっている。
 母が急ぐのには、理由があった。  
 実は、母方の祖父が脳梗塞で倒れたと言う電話が昨日の朝方かかって来たのだ。命は取り留めたが、余談を許さない容態であると言う。  
 元々もうすぐ帰るつもりだった母は、予定を早めて一人先に向かうと言う訳だ。  
 しかし唯一の孫である爽汰は、夏休み中にも関わらず、頑なに帰省を拒み、両親もとうとう根負けしたのだ。  
 これから当分の間は、爽汰一人で留守番することになる。
「ごめん、おじいちゃん」
 誰も居なくなった家で、爽汰は遠く離れた母の故郷にいる祖父へ謝った。
「でも、わかってくれるよね」

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