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Ark~アーク~ 2

砕かれた悲願

空港が目と鼻の先のところまで来る頃には、伸次の体力はほぼ残ってなどいなかった。
元々あまり体育の成績もあまりよくなかったのだが、歩いて約1時間はかかる道程を全力疾走出来たのは伸次にとって普通は有り得ないことだった。
それ程伸次の頭の中は、たった1つの望みが渦巻いていた。
伸次を今動かしているのはもはや気力だけだった。
伸次は上空を見上げた。
空港の上空もラプターにほぼ侵食されていた。
伸次はその気力だけで動く足で空港の自動ドアの前まで来ると、立ち止まった。伸次の頭に強い不安が過っていた。
自動ドアは開いた状態のままになっていた。
微妙に閉まる動作をしたり開く動作をしたりを繰り返していた。
つまりは壊れていたのだ。まるで多勢の人達が一斉に自動ドアに傾れ込んだかのような壊れ方だ。
伸次はゆっくりと空港の中へと足を踏み入れた。
自動ドアを抜けると広大なロビーが広がっていた。ロビーの壁所々にヒビが入り、崩れ落ちている部分もあった。
―何で…誰もいないんだ?ロビーには人影1つすらなかった。
ピチャッピチャッ
何処かから水滴が跳ねるような音が聞こえる。
ロビーの中はむせ返るような鉄臭さと異常な程の静寂に包まれていた。
伸次は一瞬ホッとしている自分に気付いた。
―逃げたんだ
皆逃げて無事なのだと伸次は考えたのだ。
―じゃあきっと優里だって…
伸次の顔に安堵と笑みの表情が同時に表れていた。
「もしかしたら…」
―まだいるかもしれない。空港の何処かに隠れているかもしれないと伸次は思った。
優里を探そうと伸次が歩きだした時だった。
ピチャッピチャッ…
また先程聞こえた水滴が落ちるような音が聞こえた。―さっきからなんだろう?水でも漏れているのだろうかと伸次は思った。
そんなことを考えている内に、伸次はあることに気付いた。
―ロビーの床ってこんな色だったっけ?

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