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無給地獄

『埠頭の清掃員』

目が覚めたら夜明け前の汚い埠頭にいた。
この時現実(リアル)では、バイト先をやめて、いろいろショックなことあったけど、それを振り切るように次の仕事先を無心に探していた。
さて、夢の光景を認知しよう。
空は寒そうな灰色をしていて、海は波ひとつなく穏やかだった。誰もいないし、さびしいところだったけど、なぜか安心する。
それで、すごく汚い。汚いというのは、食いちらかしに、吐瀉物とか割れた瓶ビールなどがあるからで。なので、モップや水の通ったホースで片付けていた。
そんなことをしながら、誰がを待っていた。なぜなのかはよく知らない。
目につく汚れがだいぶなくなってきたところで、誰かが私を呼んだ。
声の方を振りむくと、バイト先の女の先輩だった。
ごめんなさい。先輩、勝手にバイトをやめて。
そう素直に言えたらいいけど、これは夢だ。夢の中で謝ったって、現実は何一つかわりはしない。
先輩は口を動かしてしゃべっていたけど、内容が頭に入ってこない。
ごめんとか、残念だったとか、名残惜しいというようなニュアンスに聞こえた。
もう、夢に出てきた現実の一片から目をそらしたい。
先輩の顔を見たくなくなって自分の足元を見、それはいけないとさっき考えたことを振り切り、海を眺めた。
いつの間にか先輩はゴムボートに乗り、オールを漕いでいる。これは夢の話なので、唐突なのは当たり前だ。
私は先輩がいなくなるまでいつまでも海を見ていた。
朝の光を反射して黄色くなるまで。
そして、現実に戻る。

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