巡る季節
春
私が始めて高校に登校したのは4月の中旬だった。
別に、不登校って訳でもない。
入学前に交通事故に遭い、入院していたからだ。
休んでいたのは10日ほど。
その期間のせいか、知り合いのいない教室で孤独感を感じていた。
すでに仲のいいグループができている。
あまり社交的じゃない私は、その中に入りきれないでいた。
最初に声をかけてくれたのは、隣の席の男子だった。
「よぉ!俺、野島宣隆って言うんだ。よろしくな!」
突然すぎて、少し驚いた。
でも、それが少し嬉しかった。
「あの…、佐々木美咲です。よ、よろしく」
その時は、そう言い返すのが精一杯だった。
「怪我は大丈夫か?」
何で知ってるの?って顔をしてたんだと思う。
彼が慌てて続ける。
「あ、交通事故で入院してるって聞いたからさ、大丈夫かなって思ってさ」
「ありがとね。心配してくれるんだ」
私は笑顔で彼にそう言った。