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白くて冷たい輝く結晶




 12月25日。3年前のこの日、俺はずっと片想いしていた東條朔一(トウジョウ サクイチ)に告白された。



“ 好きだ… ”








 その日は今年一番の寒さだった。


 外と室内との温度には差があり、俺、平千夏(タイラ セナツ)は部活が終わってもなかなか部室から出られずにいた。


 電気も点けず、窓の外をただじっと見ているだけ。


 頭の中では一人の人物を思い浮かべ、切ない気持ちと、泣きたい気持ちとで複雑な心境になっていた。



 現実逃避。それができたらと強く思う。



「まだ帰んないの?」

 一人の世界に入っていると、頭の中で浮かべていた人物に不意打ちに声を掛けられた。
 俺は驚きすぎて、座っていた机からガタッと落ちそうになる。

「サッ…サク」

 東條朔一は俺の幼馴染みで、俺のずっと好きな男。

「もしかして、待っててくれた?」

 朔一は昔と変わらない笑顔で俺にそう言って来た。

「ちっ、違う…」

 不意打ちだった為、俺は挙動不審になってしまい、表情と仕草に現れてしまう。
 どうにかして朔一にその赤面している顔を隠そうと、俺は窓の外を眺めた。

「なーんだ、残念…」

 窓ガラスに反射した朔一の表情は、いつもみたいに口を尖らせて落ち込んでいる風に装っていて、それを見た俺は、言葉が途切れ途切れになってしまい落ち着かない。

「ざっ、残念じゃねーよ。俺、とっ、戸締りしてから行くから先に行ってろ」

 俺は、朔一のそのおふざけな返答に未だに慣れなくて、一人テンパってしまう。

 いつもこうだ。

 俺は、そんなやり取りが嬉しいと思っているから、だからそんな態度になる。
 
「はいはい。じゃぁ、先に下駄箱にいるから」

「わ、分かった」

 俺は朔一がドアを閉めたのを見てホッと胸を撫で下ろした。幸い、部室が暗かったお陰で顔が真っ赤になっている事に朔一は気付いていないようだった。

「良かったぁ~…」

 こんな顔を見られたら、俺が朔一を好きだと丸分かりだ。
 今まで隠して来た苦労が水の泡になってしまう。

「あ…」

 何処かの教室でクリスマス会でもしているのか、クリスマス定番の曲が微かに聞こえて来る。


 ジングルベル、ジングルベルと女子達が楽しそうに歌っている。


 俺も無意識に歌ってしまい、幼少の頃の懐かしい思い出が脳裏に過ってしまう。


「サク…」


 それを思い出すだけで、泣きたくなる。

 これから朔一は、俺の隣りで一緒に笑う事がもう無い。
 笑うだけじゃない。喧嘩する事も、話しをする事さえ難しい場所にこれから行ってしまう。


「サク……」


 朔一を好きだと想う感情が邪魔をして、朔一とちゃんと真面に話す事が出来ずにいる俺は、早くちゃんと朔一と何かを話したいと思ってはいる。

 時間が無い事も分かっている。

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