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鬼の顔




この淋しさはどこから来るというのか。幾度も過ぎた屈辱と悲壮の夜に、自分で作りあげた自分の心の宿屋で今日も何人もの男と躯を触れ合う。

私の記憶は、今もなお途切れ途切れだ。繋ぎ合わせてようやく、自分の内側の気持ちに気付くのだった。私の心が壊れた理由はたくさんあった。寧ろこうしている間にも、その理由は増え続けているのだ。


幼い頃の私。
今の私。

変わらないのは、人の手に対する恐怖感だ。振り上げられた瞬間に、私はもう私ではなくなる。記憶が途切れるとともに、私の頭の中に住み着いた誰かが姿を現すのだった。

香月という名のもう一人私。もしくは香織という名のもう一人の私。

いつからか、私は私という自分を操縦されながら、生きていた。


ニュースで騒ぐ、虐待、監護の怠慢・拒否。残念な事に私は今も尚続いている。いつになったら終わりはあるというのか。



母の顔はまさに『鬼』だった。
『鬼』に変貌しない日が、もしかすると、あったのかもしれないが、私の記憶に留まり纏い付くのは『鬼』の形相だけだった。

母はきっと、私をとても嫌いだったのだろう。女であるからなのか、それとも違う理由からなのか。母は露骨に、それを態度に出し続けた。
今は聞く事さえないので、本当の理由はわからないが、私は母から躾と言う名の虐待を受け続けた。そして離婚をし、母の躾(虐待)を引き継いだ父にさえ罵られ続け、今もまだ、不思議な位に生きているのだ。この図太さが、父や母が私を疎ましく思う原因だったのかもしれない。


私の中に住み着いた、私ではない私には名前があるようだ。
私は私で『美奈』という名前がある。
それ以外に名前があるなんて、なんだか頭の中に描かれた小説の登場人物のようで、未だに実感というものが、全くないのだ。

何故私が、私以外の人格を知る事になったか。それはある日がきっかけだった。それは突然のようだったけど、私が勝手に突然だと思っていただけのことで、記憶がない時間は今までもずっと体を共有していたわけだった。ただ私が気付かないでいただけの事だった。


そのある日とは。


ある日とは私がレイプされた日だ。今思い出しただけでも、憎悪と恐怖感が溢れる。
そして私が、今こうして言葉を綴っている間にも、胸の鼓動が大きくなり、頭の一部に軽い痛みを覚える。

思えば私は小学生の頃から頭痛が酷く、父には『子供のくせに』なんて言われながら、学校を休む事があった。
頭痛は大人の病気なのにと思いながらも、考えながらにいた。

そしてその日も、私は学校を休み、一日中家で眠ってた。
他の人格の存在と記憶は、その『ある日』に知らされた。そしてそれは、あの時も、そしてあの時もと、全て思い当たるものだったのだ。





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