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対価の秤

対価の秤



とある森の深く、深く。


一目を避けるようにしてひっそりと佇む館に、

願いを叶えるというガーゴイルがいた。

何せ悪徳でない正当なる対価を払えば、

何千年という時を生きる魔導の岩は、
情を示し願いを叶えてくれるという。

ただ、

"この世に存在する筈のないもの"に関しては、

首を縦に振らない事も広く知られていた。
よって身体を蘇らせたり、ただの人に空を飛ばせることはできない。



*******************






いらっしゃいませお客様。

お客様のご要望はなんでしょうか。

「****の"愛"」

お客様のそれに対しての対価は何で支払われますか?

「期待への応え」


畏まりました。

ではお支払頂きました後、ご注文頂きました"愛"を発送致します。

よろしければ、ご注文のお品の用途をお答えください。


「惨たらしく、見せつけて破棄」


よろしければ、理由をお聞かせください。


「…いらないから。
期待に応えなければ貰えない"愛"なんて…いらないから。」


ありがとうございました。
注文は以上でよろしかったでしょうか?
追加でも承っておりますが。


その言葉に、途切れながらも淡々とした口調を崩さなかった客が、せきを切ったように泣き出した。

ポロポロと涙が頬を伝う。
少年は身体を伏せて絶叫するように言った。

「どんな対価だって払うから……
どうか僕にあの人の無償の"愛"を……ッ!




情に深い筈の魔導の岩も、見る者を突き刺すような慟哭に眉一つ動かさず。

ガーゴイルは冷ややかに微笑み返答した。


「お客様、それは無理な注文でございますよ。」





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