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八月の憂い


 彼のことは、正直迷惑している。
「葉月さん、ここに居たんすね」
 人懐っこい笑顔を浮かべた葵は、きっと何も知らない。僕の態度が嫌がっていることや、気持ちを、分かっていない。
 誰であっても、空気の読めない、しつこい人は嫌われる。
 そう、とにかくしつこいんですよ!
 葉月は心にもない態度で葵を迎える。手を何度か振る。葵は尻尾を振る犬のようだった。
「あーまじ、寒いわ」
 そんなにしつこくて大丈夫か、というぐらいに葵は密着してくる。寒いのは苦手っすと呟く彼は隣にいつも座る。
 夏だったら、汗だくであり、鬱陶しいはずだ。
 あなたは嫌いだ。
「くっつかないで下さい! 私はカイロじゃありませんよ!」
「簡易版人間カイロっすよ。葉月さんが小さくてよかった。俺より大きいと困る」
 人の気にしていることを、グサグサとよく言える。だから、嫌いなのである。
「嫌い」
 だから、どうか、あの人を自分から引き離してください。

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