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竜と僕の物語。

心地よい日差しがちらちらとまぶたを透かす。それを合図に僕は夢から現実へと連れ戻された。


……もう朝だ…。


大きなあくびを一つして辺りを見渡す。いつもと変わらぬ風景の中ベッドの下に転げ落ちて寝ている人物に気づいた。寮のルームメイトの輝崎梨紅人だ。僕達の学校は全寮制で基本的には男同士と女同士で部屋割りされている。


梨紅人は僕より2つ年上で、背は小柄な僕より30cmほど高く、銀の長髪に赤い目という少し柄の悪そうな外見をしている。外見に反して学校では首席の成績を持ち、性格も穏やかだ。


それにしてもベッドから落ちても起きないとは、よく寝ているものだ。そう思った途端、彼は勢いよく起き上がり一言叫ぶ。


「いってぇ~っ!!いつの間に頭打ったんだ!?」


…いつの間にって、ベッドから落ちたときでしょう。


心の中でツッコミを入れるとそれが聞こえていたのか、梨紅人は僕が起きていることに気がついた。


「あれ?晴哉起きてたのか。おはよう!」


「あ、うん…おはよう。頭、打ったの大丈夫?」


「平気!俺、石頭だし!」


朝からハイテンションな梨紅人についていくことは困難かと思われた。しかし声が大きいだけであってそれ以外はごく普通だ。と言うよりもう慣れたと言う方が正しいのかもしれない。


学校に入学した当初は彼の成績を聞いて驚いた。実を言うと、梨紅人とは10年ほど前から知り合いで幼なじみとも呼べるくらいよく面倒を見てもらっている。


彼のすることはなんでも魅力的で面白く、何度も心を踊らされた。昔は彼の為すことが優れていても「年の差」のせいだと解釈していたが、それが人として優れていたなんて思ってもみなかった。


彼の自由人的な印象からも優秀な生徒には見えないのだが、中身は案外真面目で教えるのも上手く、首席でもおかしくはなかった。


さらに加えて、梨紅人は性格上、人当たりが良い。他人とは決して比べものにならないくらい優しく、いつも僕のことを気遣ってくれる。


「今日の調子は大丈夫か?」


「うん!あれからだいぶ時間が経つし、もう心配しなくて大丈夫だよ」


「そうか」


僕は2度も竜に襲われたことがある。


ものごころがついてすぐの頃。父と共に旅をしていた当時、竜が急に襲ってきた。僕は父が庇ってくれたから何ともなかったものの、父は犠牲になってその場で命を断つことになった。


それから十数年の月日が経ち、二度目の危機が訪れた。学校付近の裏山で竜に遭遇し、右肩を噛まれ竜の牙の毒に神経をやられて右腕は動かなくなった。


それがつい最近の話で、梨紅人は自分のせいだと責任感を感じているらしい。もとの原因は別の…いや、僕にあるというのに。


でも、僕は梨紅人に助けられた。だから彼にはとても感謝している。


「梨紅人」


「ん?何だ?」


「ありがとう」


「…っ何だよ、そんな改めて言われると照れるじゃん」


唐突に言ったせいか、梨紅人は少し照れ臭そうに笑った。

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