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1日目

ーー4月、入社一日目。
僕はごく普通の中小企業のサラリーマンとして、これまた普通の大学を卒業後、一般のレールをなぞるようにこの会社に入った。
思えばこの22年間かなり普通のレールを歩んできたと思う。
もの凄く勉強ができたわけでもなければ、もの凄くスポーツが得意だったわけでもない。かといって顔がいいというわけでもない。
そんな平凡な僕にだって、彼女がそこそこいた。残念なことに今現在はいないが。

「…ということで、今年度の新入社員の『入須 千草(いりす ちぐさ)』君だ。新卒の若者だ。…」
そこから課長の長い話が始まった…。
ぼーっとしてると、色白のやたら綺麗な顔立ちの社員と目があった。一瞬女性かと思ったが、よく見るとネクタイを締めてて体格からすると男性だ。
「…では、入須くん一言。」
はっ!と、我に返った。
「只今紹介に預かりました入須千草(いりすちぐさ)と申します。右も左もわからず、至らない点も多々あると思いますが、ご指導ご鞭撻の程宜しくお願いします。」
と、まあ適当に自己紹介を済ませた。

「じゃあ、入須くん今日から君の直属の上司にあたる城井(しろい)くんだ。城井くん、入須くんの指導よろしく頼んだ。」
驚いた。先ほど凝視していた色白の社員が紹介されたのだ。
「今日からお世話になります。よろしくおねがいします!!」
「城井麻雄(しろいまお)です。こちらこそ宜しくお願いします。私の方がお世話になることもあると思いますが、入須くんの上司として出来るだけ頑張ります。」
彼は上司だというのに、全く偉そうではなく寧ろ謙遜した感じだった。
名札の『城井』という字を見る限り、漢字こそ違うが名前の通り綺麗な色白だ。

とまぁ、軽い挨拶をしたところで課長は去っていった。

「じゃあまず、仕事の流れを説明しながら社内の案内をするから…」
1日目の仕事が始まった。

「あ、そうだ。入須くん、案内の前に1つ言っておきたいことがある。私は苗字で呼ばれるのが嫌いなんだ。」
一瞬何を言ってるんだこの人は、と思った。
「だから、私のことは下の名前で呼ぶように。」
ふざけてるのかと思ったが、彼の表情は真剣だ。
「は、はぁ…」
曖昧な返事をしてしまった。というのも、彼がまだふざけてるかどうか、わからないからだ。
「私の名前は先ほど紹介したから、わかりますね?」
「わ、わかります。」
「苗字で呼んだら…」
これは真剣に言ってるんだろうか…。
「呼ばないです!呼ばないです!」

「麻雄先輩」
そう呼ぶと麻雄先輩は、にっこり微笑んだ。白くて端正な顔立ちは、まるでお人形を連想させた。

1日目から麻雄先輩は変わっていた。後々もっと変わり者だということを思い知らされるようになるのだが、この時はまだ僕の中ではちょっと変わった白い人というイメージだった。

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