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わたしと彼とときどき髪の毛





―――――この学校には、王子と呼ばれる人がいる。

彼は、県内トップの偏差値を誇る頭のいいこの学校の入学試験ににおいて満点を取り、その後も常に学年トップをキープする天才的な頭脳をもっていて。
帰宅部なのに運動が得意で、その実力は普段の授業はもちろんのこと、球技大会や体育祭の活躍で明らかになっている。
そして、王子と呼ばれる最大の理由はかなりの美形だってこと。
180cmを超える長身にはキレイに筋肉がついている。

そんな容姿で一番目がいってしまうのは、あのミルクティー色の髪の毛だ。
肩に付きそうでつかないその髪はどこのシャンプーを使っているのか聞きたくなるほどさらさらで、光に当たるとキラキラと反射する。

眉目秀麗、頭脳明晰、しかも、王子は金持ちだったりしちゃうのでとてもモテる。

まさに王子と呼ばれるために生まれた王子様なのだ。



外ではしとしとと雨が降っている。そう、今は梅雨の時期。6月だ。まさに梅雨真っ只中の今朝も王子の髪の毛は湿気に負けずふわふわ。うらやましい、ちょっと触ってみたい。

そんなことできるわけないんだけどね。

じめじめしてる気候でも王子のおかげで教室は活気づいている。
わたしが2年に進級してから3か月経った。王子と同じクラスになって、いわゆるクラスメイトという関係になってから3か月が経ったのだ。つまり、あの有名な王子は、わたしは同じ学年、同じクラスってこと。


でも
王子といまだに話したことないんだけどね。別にわたしは寂しい子じゃないんだけど。

…ちょっと王子の取りまきが邪魔で。…うん。さすが王子。

今も取りまきは王子の席の周りに居座り、王子の近隣の席のクラスメイトに迷惑をかけながらも少しでも王子の目にとまるように頑張っている。
けど、その努力も寝ている王子の前では何の意味も成さないだろうが…。




―――――キーンコーンカーンコーン

「お前ら早く席つけよー。」

チャイムが鳴りいつの間にか教室に入ってきていた担任のそんな声が教室中に響き、王子の周りにいた取りまきたちは後ろ髪をひかれなが…

いや、後ろ髪をむしられならがらも自席へと戻っていった。
さてさて、地獄へのカウントダウンは刻一刻と迫っています。何を隠そう、次は担任の先生が出欠をとりますよ。

本来ならこれは先生が出席簿の登校していない生徒の欄にチェックを入れて、後々の資料とする、あくまでも先生が黙々と行うものだったのに
先生がクラスの女子(王子のファン)に押し切られたという理由で、先生は生徒の名前を呼び、呼ばれた生徒ははい、と返事をして、先生はその声で生徒がいることを改めて確認し出席を認める。

ここで気になることは、なぜ王子のファンは先生を押し切ってまで出欠確認の方法を変更したのか、ってことだろう。


まあ
理由はカンタンで、王子ががいわゆる無口クールと呼ばれる人種だからだ。

彼はたいてい8時半に鳴る本鈴の30分前、つまり8時には教室にいるらしい。

でも、机に座った瞬間に腕をまくらに寝るらしい。
そしてホームルームまでは誰が起こそうと起きず、30分間を寝て過ごす。

しかも、普段はめったに話さない。王子のちょっと低い、テノールの色気漂う声を聞ける機会はそうそうない。

で、まあ王子大好きな取りまきやファンたちはこぞって先生にお願いしにいき、見事声を聞く機会を手に入れたのだった。

ただ、返事をするだけだったらめんどくさいなぁ、で済むんだけど。残念なことに王子の取りまきたちがそんなんで引き下がるわけもなく、王子が返事をするたび、キャーキャーうるさいのであった。


まあ
じゅうぶん地獄だよね。

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