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○●黒帯ベイベー●○

第1話:月に吠える

1、月に吠える
…甘く切ない妄想タイム


(今日も佐野サン、ヤバかったなあ…)

 ヒナは腰に手を当てて、ビン入りのコーヒー牛乳をイッキすると、夜空に雄叫びたいのをおさえて、大きく息を吐いた。

 吐き出した想い、コーヒー牛乳の味。

 色んな余韻に浸りながら、ヒナはそのまま、星の無い夜空とにらめっこを始めた。

 しばらくそうしていたら真っ黒のスクリーンに、想い人・佐野亮平の顔が、まるで満月のようにぽっかりと浮かんでくるからだ。

(ヤバいヤバい…、ヤバすぎる、男前過ぎるよ!!)

 町で唯一の(23時で閉まってしまう、まさにセブンイレブンな)コンビニの前。

 ヒナは夜空に映し出した妄想相手に一人もだえ、傍らでタバコを燻らせながらメールを打っていた、幼なじみの慎吾を気味悪がらせた。


「…まさかそのコーヒー牛乳に、何か入れて飲んだんじゃねえだろーな?」

 慎吾は心配して、ヒナの顔をのぞき込んだのだが、

「ウルサイ!」

 ヒナはその方も向かずに言い捨てると、慎吾の腿にキックを打ち込んだ。

 慎吾は「イテッ!」と叫んで、携帯を取り落としそうになった。

「オイ!!」

 慎吾は夜空相手にニタニタを続けるヒナに、たまらず噛み付いた。

「おまえ、一般人に暴力ふるうと捕まるって注意受けてるんだろ!? 喧嘩空手の黒帯のくせして…」

「だから、ウルサイって言ってんじゃん!」

「イテッ!」

 こりずにヒナの『アッチ向きながら蹴り』を受けた慎吾は、コイツには敵わないな…とばかりに舌を打つと、またメールの続きに取り掛かった。

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