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今日、君の家近く3

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    完結
    2016/11/28 更新
    今日、君の家近く3/  はんな
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    作品紹介

    昔のことを、思い出していた。

    俺の幼馴染のけんちゃんの事だ。幼稚園からいつも一緒だった彼が、小学校3年生の頃俺に告白してきた。

    嬉しかった。
    でも、タイミングが悪かった。帰りの会で、けんちゃんはそれを発表したのだ。
    俺はけんちゃんに対して、突き放すように酷い言葉を言い放った。

    俺の発言で、教室は落ち着きを取り戻した。それからは、彼の気持ちを知ってかしらずか他の友人と一緒になって攻撃するようになった。

    けんちゃんの気が他に行かないように必死だった。俺だけのけんちゃんだ。誰のものにもさせたくはない。
    もちろん、一緒になって虐めている友人は遊びで彼を攻撃していた。

    けんちゃんの目は綺麗だ。いつまでも見ていたい。でも、この目が他の誰かを引きつけてしまうかもしれないという焦りで、彼に度が入った眼鏡を買い与え、「気持ち悪い」と言って、前髪を伸ばさせてその目が公にならないようにした。

    中学生になって反抗期を迎えると、けんちゃんに対する友人たちの当たりが厳しくなっていった。
    高校に入ると、けんちゃんは俺のものだという証拠が欲しくなった。耐えられなくなって、けんちゃんに自分の尿や性液を掛けては飲ませた。どうしよう…このままじゃけんちゃんは俺を嫌いになる。いつの間にか、けんちゃんに好きだというタイミングも失ってしまった。

    どうすれば、彼は俺のものになってくれるのだろう。

    そんな時、けんちゃんが他人に目を見せて、綺麗だと言われたという話を聞いた。身体中から変な汗が出た。聞けば隣のクラスの人気者の浅倉 湊とかいう男にたぶらかされているらしい。
    当たり前か…俺はけんちゃんに酷いことをしてきたんだ。俺のことなんか呆れているに違いない。

    俺は、世界一馬鹿なことをした。
    もしあの時、俺も好きだと言っていたらけんちゃんと僕の関係は変わっていたのだろうか。

    ————————————–

    「ふぅ…よしっ。」

    勢いよく家の扉を開けた。足取りは軽く、走るのも苦しくない。
    校門まで、誰も僕とは気が付かなかったらしい。朝の風紀委員の仕事を終え、教室に戻るとたっくんが日に当たりながら眠っていた。
    あの時、僕が彼にあんな事を言わなければ彼に迷惑を掛けずに済んだのかな…。

    季節は冬が過ぎ、春を迎えていた。
    たっくんの肩に桜の花びらが付いている。

    ヒタリとたっくんの服に僕の手のひらが触れる。

    「なっ…!!」

    ガバッとたっくんが起き上がる。

    目が合った瞬間、身体中に電気が走ったような感覚がした。

    「は…?お前、髪…!!」

    「やっぱり、おかしいかな…眼鏡しないと落ち着かなくって…。」

    たっくんの肩がワナワナと震えている。

    「今日、どうしてもたっくんに見せたくて…それで、そのっ…」

    「えっ、嘘…!!本当に健一くん!!?」

    教室に他のクラスの女子が入ってきた。
    それからどんどん人が増えていった。HRが始まる前に、僕の周りには人が大勢が集まっていた。

    たっくんは、僕に何も言わなかった。

    昼休みには何人かに呼び出され、告白された。放課後も呼び出されて告白ラッシュが1日続いた。

    だけど、僕には他の誰よりも好きな人がいる。今日こそは想いを伝えなくちゃ…。

    「健一くん、きょうは君の話で学校中が大騒ぎだったね。」

    「あはっ…ちょっと疲れたかな…。でも、湊くんたちのお陰で自信がついたよ。」

    「お疲れ様です、健一さん。今日で私たちの家に来るのも最後になりますね。」

    「うん。今まで、本当に根気強く付き合ってくれてありがとう。」

    「いい顔だな。家に帰って最初の頃の写真でも見るか。」

    家に着くと、最後の日だからと湊くんのお母さんがいつもより多くお菓子を用意しておいてくれていた。

    「よかったわねぇ…すっかりハンサムになっちゃって。最初なんか、ちょっと不安になるくらい暗かったから安心したわ。」

    「ありがとうございます。どれも湊くんと麻衣さんのお陰です。」

    「これからも、二人と仲良くしてやってくださいね。」

    「いえ、こちらこそお願いします。」

    湊くんのお母さんが下に行くと、早速、ビデオ鑑賞会が開かれた。
    それは、妹の麻衣さんが彼の家で特訓していたのを録画していた映像だった。

    「うわぁ…根暗って感じ。」

    「これはあの時だね。雨の日で二人とも機嫌が悪かった日。」

    「バーベル持てるようになったのもこの頃ですね。」

    段々と今の状態に近づいてくると、盛り上がった。

    「結局、人は見た目で判断されちゃうんだけどね。本当の最終目標は、中身まで見てくれる人に出会うことなんだ。分かるよな、健一くん。」

    「はい。よく分かります。ちょっと、その事で相談があって…」

    「じゃあ、私は抜けますね。健一さん、頑張ってくださいね!」

    「ありがとう。」

    麻衣さんが外に出たのを確認して湊くんに相談をし始めた。
    湊は顔色一つ変えず、僕の話を聞いてくれた。

    「それじゃあ、また明日。」

    「また…明日。」

    手を振って別れた。

    胸が高鳴った。早く、早く好きって言いたい。
    告白はタイミングだ。湊くんはそう教えてくれた。確かに、そうだ。みんなの前で言ったから、失敗しちゃったんだ。今度こそ…

    遂に家の前まで来てしまった。インターホンを押して、それから、今までにない程息を吸って吐いた。

    「…はい。」

    インターホンから返事が返ってきた。

    「たっくん…!!」

    長い間が空いた。

    「チッ…帰れよ。」

    「嫌だ…!!会わないなら、僕、帰らないから。」

    「付きまとってくんなよ。気持ち悪い目しやがって。良かったな、お前。湊が好きだったんだろ?仲良くそっちで遊んでろ。」

    「違うよ…たっくん。僕が好きなのは…」

    「うるせぇ…!!近所迷惑だ!!とっとと帰れって言ってんだろーが!!」

    「たっくん…!!僕の話を聞いてよ!!…確かに、たっくんにはいっぱい迷惑かけたし、僕なんかウザがられてもしょうがない。でも、もし…少しでも話を聞いてくれるなら、ドアを開けてよ。…好きなんだ、たっくんのことが。」

    ブチッとインターホンの電源が切れた。このままたっくんが出てこなかったら、諦めよう。
    これで、僕の長い長い片思いもここで終わりだ。終止符を打とう。

    暫くしても、たっくんは出てこなかった。

    「はぁ…ダメ…だよね。」

    肩をガックリ落として、溜息をついた。
    と、その時、後ろから誰かに抱きしめられた。

    「わっ…!!?」

    身動きが取れないまま、暫くその状態が続いて僕はやっとそれが誰なのか理解が出来た。

    「たっくん…。」

    …彼の匂いだ。彼の温もり、彼の鼓動、彼の吐息。全てが伝わってくる。

    「顔、見るなよ。…泣いてんだ、俺。」

    「僕も、泣いてる。」

    「からかって、ないよな。俺の事、好きだなんて。」

    「好きだよ、たっくん。大好き。」

    「お…俺、俺の方がお前の事、もっと好きだし。…家、入れよ。もっと、いっぱい話したい。」

    「うん、僕も。」

    たっくんは意地悪なたっくんじゃなくって、あの頃の優しいたっくんだった。

    今日、初めてたっくんの気持ちを知った。

    家に入ってから、一度も僕の事を気持ち悪いだなんて言わなかった。
    ベッドの上でも、ずっと僕の名前を呼んでくれた。僕の目を、綺麗だと一言ポツリと呟いた。それで、嬉しくて涙を流したら、もっと綺麗だと笑って言ってくれた。

    あの日以来、よく見たことのないたっくんの瞳に僕が映っている。

    それは、僕が人生の中で一番見たかった光景だった。


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