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桃と動物とときどきオニ

episode.01

父が死んだ。

家の中はガランと静まり返っている。仏間のある部屋には、まだ高校生くらいの青年が座って仏壇に並ぶ若い夫婦の写真を見ている。
線香を1つ取りロウソクから火をつけて手で仰いで消すと煙と共にラベンダーのいい香りが漂う。線香立てにそれを立てると手を合わせて
「おはよう。母さん父さん…今日こそ父さんの遺品整理終わらせるよ」
今日の抱負を述べると「よしっ」と気合いを入れて父の書斎がある二階へと向かう

母は俺が産まれてからすぐに亡くなったらしい。それからは男手一つで俺を育ててくれていた。だけど、五年前くらいから体調を崩して療養してたけど、ついこの前亡くなった。
父には、とても感謝している。
「あとはこの謎の本の数々か…」
古めかしそうな本が山積みになっており捨てていいのかもわからず首を傾げて本を睨みつける
着けていた軍手を外して少しホコリを払ってから一番上の薄い本を手に取り開いてみると中には見たことがある文が飛び込んでくる
「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていました。おじいさんは山へ薪を拾いにおばあさんは川へ洗濯に行きました……何だこれ桃太郎か?」
古い本だが今と変わらない桃太郎の話が書いてあり最後まで読まずにパタリと閉じてため息をつく
「父さん桃太郎好きだったのか…知らなかった」
プレミアがついているかもしれないので、とりあえず取っておく事にしてダンボールへとしまい
机の上を片付けると引き出しを開けて仕分けていき奥の方から手のひらサイズの箱が出てきて中を開けると皮の紐に刀のようなアクセントがついたブレスレットが入っている
「アクセサリー?あれ?これどっかで…」
整理したアルバムを取り出してパラパラめくり子供の頃の写真を探す
「あった…」
写真の父親の腕には同じブレスレットがされているが刀のアクセント以外に宝石が3つついているが手元にあるものにはなく
「同じ…だよな?」
いくら見比べても同じように見えて眉を潜めて首を傾げる
何度見ても変わらず悩んでいても仕方がないのでアルバムを棚に戻すとブレスレットを腕につけて眺めてみる
「宝石はなくしたのかな?形見だし着けててもいいよな…」
思ったほど悪くないアクセサリーに満足そうに笑う
父親の形見だと思うと愛着も湧いてくる
「よし、もう少し頑張るか…」
ブレスレットを着けたまま掃除を再開して書斎をピカピカにしていく

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