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スター誕生NH

代役

高校卒業後、目的もなく東京に出て来て三年になる。

俺の名前は高梨 峻

職業はフリーターだ。


低学歴、低収入、彼女なし

何も良いところがない。

当然人生に楽しみもない。

ただ、惰性で生きている。


バイトに明け暮れ、仕事が終わると家に帰って眠るだけ

そんな日々の暮らしをもうどれくらい繰り返してきたかわからない。


今日という日もそんな退屈な連続の中の一頁を飾るだけのもの・・




「お弁当買ってきました。」


近くの店で人数分の弁当を抱えてスタジオに戻ると
何やら騒がしい。


「ちょっとさあ、困るんだけど。」


カメラマンの三澤さんが腕組みして不機嫌な表情をしている。


「どうしたんすか?」


メイクの梨花さんに聞くと


「モデルの子がドタキャンしちゃったんですよ。

電話かけても出ないらしくって。」


俺の耳元で囁くように言った。


「それは大変っすね。

今日撮っとかないと〆切に間に合わないじゃないですか。」


と、言いながら
俺には関係ない話で、内心はざまあみろ状態だった。

スタイリストの明石さんに至っては
その場をウロウロと動きまくりながら何処かしらに電話している。


どうせ、大して売れてない雑誌の一コーナーじゃん

どうでもいいよ。


俺は早く弁当を食いたいなあなんて思いながら現場の混乱を傍観者として
後ろからボーッと見つめていた。


「代役はまだかよ、マジ間に合わないって。」

三澤さんのイラつきが半端ない。


たかだか着まわしの一シーンなんてホントどーでもいいのに。


「梨花ちゃん、悪いけどモデルになってくれる?」


ついに編集部の東さんが最終手段に出た。



「えっ、ワタシ?


ムリですって。」


梨花さんは慌てた様子で手をバタバタさせた。


おっ、これは妙案だ。

梨花さんは可愛いし充分に代役が務まる。

これで解決だね。

さっさと撮影して飯にしよーぜ。



「いや、ちょっと待って」


三澤さんがまた難しい顔をして口を
挟んできた。


「梨花ちゃんでいいんだけどさあ

ちょっとね

背が・・」


「そうなんです。

ワタシ154しかないですし

ホントムリです。」


もったいないなあ。

確かに背はちっさいけど
顔は可愛いのになあ。



「だよね。

ちょっと背が足りないんだよね。

そうだな


出来れば彼くらいの高さが欲しいね。」

三澤さんは俺を見つめて言うと、動きを止めた。




「東ちゃん、彼いけるんじゃない?」



三澤さんの言葉に俺はもちろん
皆何の事だかさっぱりわからずビミョーな空気が流れた。


それを打ち消すように東さんか手を叩いて大きな声で言った。


「三澤さん、いけますね!


いけますよ、確かに。


背に腹は代えられません


そのアイデアいただきます。」


俺はさっぱり意味がわからず、そこに立ち尽くしていると

東さんが梨花さんと話し込み始めた。


「梨花ちゃん、ウィッグ持ってきてる?」


「はい、あります。」


「どう、いけそう?」


東さんは俺を見ながら言った。


「任せて下さい。」


テンパってた梨花さんが妙に自信満々で
これまた俺を見つめて言った。



「何なんすか?

意味がわからないんですけど。」


少しイラつきながら聞き返すと

東さんは俺の肩をポンと叩いて言った。



「キミが代役だ。拒否権はない」

と・・

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