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色付け世界!

新世界到来①

恋をすると世界が色付く。
幼馴染みの口癖だ。オレの幼馴染みは恋多き男で、気付いたら毎度違う女子にアモーレを囁くような奴。
きっと生まれる国を間違えたんだろう、残念ながら顔が良いのが取り柄の生粋の日本人だ。

そんな幼馴染みの口癖を思い出してしまったのには訳がある。
口癖を聞き流すのがオレの日課だった、物心ついた頃からそんな幼馴染みが傍に居たせいで色んな迷惑をかけられ、自分の恋愛より先に人の恋愛と歩んできたせいで恋愛には懲り懲り、色とか付かなくて良い、オレの世界はモノクローム、そんなことを考えて生きてきたのも15年と5ヶ月。

高校でも幼馴染みと一緒かなんて思い、せめてもの慰めは女子が居ない男子校で、幼馴染みとクラスが別れたこと。
いつも幼馴染み経由で女子に囲まれていたので、見渡す限り女子も居なければ幼馴染みも居ない、そんな教室で一度深呼吸をした。
男の匂いがする、当たり前だ、男しか居ない。
入学式当日に教室で深呼吸をする、何てキモいんだろうかオレは。
そこで大変なことに気付く。

幼馴染み以外の男と話したことがない、と言うことを。

いつも幼馴染みがオレの周りで女と痴情を縺れそれを仲裁するのが日課だった、昨日もそんな感じで駆り出されていた。
走馬灯のように記憶を駆け巡ってみたが、どう言うことだ、オレに男友達が居ない。
幼馴染みを殺したいほど憎んでいる女友達なら腐るほど居るのに、だ。

「う……」

オレの人生が幼馴染み中心で回ってた事実に、奴が傍に居ないことで初めて自覚し鬱で目眩がする。
青春の無駄遣いだ、目眩くらいするだろう。
前のめりになるオレの背に、何かがスッと触れた。

「おい、大丈夫か? 具合悪い?」

知らない、男の声。
当たり前だ、オレの知り合いはこの学校で幼馴染みしか居ないのだ。知ってる声を今聞いたら張り倒しかねない。
人の気配が間近なのを感じ、顔を上げれば。

「……色だ」
「え?」

今まで幼馴染み曰くオレの世界はモノクロームだったのに、何言ってんだと聞き流していたが、違った。

鮮やかな茶色、健康的な肌、そして髪より暗めの茶色の目が、人好きしそうな幼馴染みとは違う好青年そうな男がこちらを不思議そうに見下ろしていて。
慌てて口を塞ぐ。
何だ……?
今まで感じたことないほどに、眩しい、世界が眩しい。

「大丈夫か? 吐きそうな感じ?」
「……」

口を塞ぎながら首を横に振ると、色付いた世界で好青年は眩しい笑顔をオレに向けた。

「よかった。入学式にクラスメートが体調不良って何か嫌だしさ」

優しい。
眩しい上に優しい。
何だこれ、何だ、これが男……?
自分でも混乱する頭の中に響いたのは、幼馴染みのあの口癖。

恋をすると世界が色付く。

眩しいほどに鮮やかに見えるこの男に、オレは。
恋をした、と言うこと。
そう言うことなのか?

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